編曲
add9を使って響きをやわらかくする
三和音を土台に、必要な場所だけadd9を加えて響きをやわらげる編曲方法と、使いすぎないための判断ポイント。
この記事で分かること
add9 は「明るさを足す」ための便利な和音ですが、使いすぎるとどの曲も同じに聞こえます。ここでは、必要な場所だけに add9 を入れる判断と、メロディとの衝突を避ける置き方を扱います。
add9 の基本
- add9 = 三和音 + 9度(=2度の1オクターブ上)
- 7th を含まない点が、maj9 と違う
- 例: C → C add9(C E G + D)
使いやすい場面
- 主和音(I)の延ばしたいところ
- フレーズの終わり、長い音価
- イントロ・アウトロの開始/終止音
使いにくい場面
- メロディが 9th と同じ音、または半音違いのとき
- ベースが動いている(過渡的な)和音
- 短調の vi や iii 上で使うと曖昧になりやすい
メロディとの干渉チェック
| メロディ音 | C add9 への影響 | | --- | --- | | C | OK(ルートと一致、安定) | | D | NG(9th と完全一致、和音内で重複) | | E | OK | | F | 注意(E と半音、3度との衝突) | | G | OK |
置き方のコツ
- 9th は内声ではなく、上声に置く
- 左手は単純なルート1音
- ペダルで全音をつなぎすぎない
9thの置き方を耳で確かめる
文字で「上声に置く」と読むより、1音だけ動かした3つの和音を続けて聴くほうが早いです。下の3つは、左手の C3+G3 と右手の E4+G4 が完全に共通で、変わるのは右手のいちばん上の音だけです。
聴き比べ
上に足す音を替えて聴き比べる
左手の C3+G3 と、右手の E4+G4 は3つとも固定です。替えているのは右手のいちばん上の音だけ。1音だけ動かすと、和音の性格がどう変わるかが分かります。
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C C3 G3 / E4 G4 C5
ここを聴く:基準の響き。上の音が下の C と同じ音名で、いちばん安定して聴こえます。
右手のいちばん上が C5(根音のオクターブ)。3つの中で最も落ち着いた、動きのない響きです。
-
Cadd9 C3 G3 / E4 G4 D5
ここを聴く:上の音が和音から離れて、広がって聴こえるところ。
右手のいちばん上だけ C5 から D5 へ1音上げています。9th が和音の外側に置かれるため、濁らずに明るさだけが足されます。
-
Cmaj7 C3 G3 / E4 G4 B4
ここを聴く:余韻が長く残り、少し切なさが混じるところ。
右手のいちばん上を C5 から B4 へ半音下げています。根音 C との半音の関係が、余韻の残る柔らかい緊張を作ります。低音を強く弾くと濁りやすい和音です。
確認:いちばん上の音が、和音から少し浮いて明るく聴こえたのはどれですか。
答えと解説を見る
Cadd9add9 の D5 は、下の G4 から長5度上に離れています。和音の中に埋もれず、上に広がる音として聴こえます。同じ D でも C4 と E4 のあいだに挟むと長2度が2つ続くクラスターになり、明るさではなく濁りになります。
Cadd9add9 の D5 は、下の G4 から長5度上に離れています。和音の中に埋もれず、上に広がる音として聴こえます。同じ D でも C4 と E4 のあいだに挟むと長2度が2つ続くクラスターになり、明るさではなく濁りになります。
9thは「隣」ではなく「上」に置く
add9のDを、CとEのあいだ(C4 - D4 - E4)に挟むと、長2度が2つ続くクラスターになり、明るいというより濁った音になります。ここで鳴らしているCadd9は、Dを右手のいちばん上(D5)に置いています。同じ add9 でも、配置を変えるだけで響きが澄みます。
実際に弾くときも同じで、右手でDを足すなら、メロディより上か、和音の一番上に置くと落ち着きます。
なぜ3つとも左手にC3+G3があるのか
和音の性格を比べるとき、変える音は1つだけにするのが鉄則です。この3つは左手のC3+G3と右手のE4+G4が完全に共通で、右手のいちばん上だけが C5 → D5 → B4 と動きます。違って聴こえた部分は、その1音の差だけが原因だと言い切れます。
左手に根音を置いているのは、実際に弾ける配置にするためでもあります。C4-E4-G4-D5 を片手で押さえると14半音になり、多くの人の手には届きません。根音を左手に預ければ、右手は E4-G4-D5 の10半音で収まります。
なお、3つめのCmaj7は低音を強く弾くと濁りやすい和音です。聴き比べで柔らかいと感じても、左手を右手より大きく弾くと印象が変わります。
段階的な使い方
- すべての I を I add9 にする → 多すぎる
- 終止と長音だけ add9 にする → 落ち着く
- 旋律と衝突する箇所だけ三和音に戻す → 完成
関連の和音
- Cadd9 → 明るい広がり
- Cmaj7 → 余韻が残る
- C6 → 軽やかな響き
- Csus2 → さらに浮遊感がある
add9を入れる前に考えること
add9は便利ですが、曲をヒーリング風にする万能薬ではありません。まず確認すべきなのは、メロディがすでに9thの音を含んでいないか、低音が濁っていないか、ペダルで前の響きが残りすぎていないかです。ここが整っていない状態でadd9を足すと、柔らかさではなく曖昧さが増えます。
9thは、基本の三和音から少し外側へ視線を向ける音です。だからこそ、長く伸ばす場所や、フレーズの入口・出口で効きます。短い通過和音すべてに入れると、どの響きも同じ色になり、曲の輪郭が弱くなります。
4小節の実践例
C-G-Am-Fの進行なら、最初からCadd9-Gadd9-Amadd9-Fadd9にしないでください。まずC-G-Am-Fを普通に弾き、次に1小節目のCだけCadd9にします。それで入口に空気が出るか確認します。さらに必要なら、4小節目のFだけFadd9にし、終わりの余韻を少し広げます。
この順番にすると、add9が本当に効いている場所が分かります。Calm Pianoでは、音を足した数ではなく、足した理由が聞こえることを編曲の専門性と考えます。